無目的日記昼凪

暖かい日差しの中の海、波ひとつないどこまでも続く平穏な地平線

夢の話
昔好きだった人で初めての恋人が出てきた 場所は小学校

わたしたちは思想の検閲を受けている
ここから弾かれるととんでもないことになる、多分死ぬ、とわたしは思っていた
それが怖くて「嘘ではないけど」くらいの偽りをしてしまう それによって罰を免れる
ところが恋人は嘘がつけない いや嘘をつかない

罰を免れたわたしは、それでも後悔していた 自分に嘘をついてしまった
検閲を潜り抜けた人はそのまま部屋に残り、引っかかった人は別室へ連れてゆかれる
わたしの後に検閲を受けた女の子は「いやあ、うまく嘘つけてよかったです えへへ」などと言って笑っている
マジか そんなにあからさまに嘘なのに、なんとも思わないのか そうまでして生きていたいのか いやわたしはもう人にそんなことを言えない だってわたしも自分の気持ちを見て見ぬふりしたのだから

わたしたち、生き残った人間は、また別の部屋に連れてゆかれるようだ わたしははたと気づいた これは永遠に続く 一回きりのことじゃないんだ 一度嘘をついたら、もうずっと嘘をつき続けるしかない 途中でやめたら死ぬだけ
部屋から部屋へ移動している最中、さきほどの検閲に引っかかった人たちの集められた部屋を通った ドアが少し開いている その隙間から、一列に並べられた人間を、ピンヒールを履いた女性が蹴っているのが見えた
あ、もしかしてこれはこれで終わりなんじゃないか とんでもないことになると見せかけて、一応罰を加えて、あとはもう逃す この検閲の本当の目的は……
わたしは気づく ここで降りていたほうが良かったのだ これからは訓練が始まる

部屋へと移動する途中、監視役に首元に注射器で薬を刺された
咄嗟に奪って腹のあたりに差し返すが何の反応もない これは人間じゃない
しかしもう後には引けない ダッシュで逃げようとすると、背後から硫酸をかけられた 熱くて痛い だが走るしかない
校門を抜けて畑に出る 猫が川を泳いでいる 人がいた! と思ったら、それは顔面がしわくちゃの薄い紙でできている少年だった

もうこの夢いや、と思ったら目が覚めた 夢はすごい どんなにリアルでもだいたいどこかで夢と分かっていて、もうほんといや、やめたい、と思ったらやめられるんだもの 現実はそうはいかない
なんだかどっと疲れていた
姿かたちは昔の恋人だったのだが、中身は紛れもなく今の同居人だと思った
嘘をつくことは怖い