無目的日記昼凪

暖かい日差しの中の海、波ひとつないどこまでも続く平穏な地平線

一日中現像作業をしていた 毛穴や青髭をひとつひとつ潰してゆく 知り合いから、マスクと消毒液、あと近所で売っているお高い食パン一斤の差し入れあり 切って冷凍庫に入れておく
同居人に「今晩は月がきれいデーなので、帰りにでも見てみてください」とLINEをした

寝る前にふと窓越しに空を見てみると、ピンク色のまんまるい月が浮かんでいて思わず声がでた あんなLINEを送ったのに、自分では月を見ていなかったのだった 急いでカメラを取り出して何枚か写真を撮ったところで、ピンク色はすっかり薄くなってしまった もっと早く見ていたらもっと濃いピンクだったのかな 冷えたベッドに潜りこんで眠った

子供のころ、今日は月がきれいだからとか流星群だからとかで、親によく外に連れ出されていた 庭先、近所の畑、ときには車で山の方まで そんなことを不意に思い出した

見てみるとワーッとなるのだが、わたしは出不精なので当時はそれをちょっとめんどうに思っていた節もある 今になってその気持ちが分かる 同居人と生活を共にするようになって、親の気持ちがよく分かると思うことが増えた

帰ってきた人を迎えて訊く「楽しかった?」 昔は監視されているみたいでちょっと嫌だなと思っていた 楽しかろうが楽しくなかろうが関係ないでしょ 楽しくなかったとして、わたしが素直に楽しくなかったと答えるかも分からないわけだし 楽しかったらどうなんだ 楽しくなかったらどうなんだ なんて思っていた でもそういうことじゃないんだな 今日を楽しく過ごしてくれていたらいいな どんなことをしたんだろう そんで何を思ったんだろう そういうことを聞きたくて訊く 話を聞かせて欲しい 母はたまにそんなことを言っていたっけ そうだね できるだけ話をしよう