無目的日記昼凪

暖かい日差しの中の海、波ひとつないどこまでも続く平穏な地平線

昨晩は寒くてなかなか眠れなかった やはり寝袋の性能があまりよくないのだろうか と言うかもしかしてシンプルに夏用なのだろうか
コテージの中は、ときどき寝返りを打つ音が聞こえるくらいで、とても静かだ
時計を見ると午前4時半 もう誰も帰ってこないだろうとタカを踏んで最後の毛布を使おうと手繰り寄せる 寝袋が擦れてまあまあデカい音が鳴る
そのとき、「寝れない……いつまで経ってもひとりぼっち」と言う声が聞こえた
やべ、寝てない人いたんだ しかも独り言風に喋っている これは確実にわたし(起きている人)に話しかけているんだと思った 
「いつまで経ってもひとりぼっち」って、この人いつから眠れてないんだ? と思いながらも、長いこと眠れなかったところにわたしがガサガサやったもんで「起きてる人いた!」と喜ばせてしまったのだと思った それでもわたしは眠りたい あと2時間半の睡眠をじゅうぶんに大切にしたい そう考え、寝返りを打っただけです・起きていませんと言う強い気持ちで体を固くして一切の物音を封じた

この喋っている人、わたしは確実にでっちゃんというスタッフの女の子だと踏んでいた
声のする方向がそうだったし、舌っ足らずで子供のような喋り方がなんとなく似ているように思えたのだ
それに、ライブ中にけっこう酒を飲んでいたらしく、この中の誰よりも早くコテージに戻って眠っていたので、そこからずっと眠れていなかったとすると、「いつまで経ってもひとりぼっち」と言うのもなんだか違和感がない気がしたのだった

翌朝、朝食を取りながら、手始めに同室だった亜矢子さんに「昨日夜中喋ってる人いませんでしたか?」と聞いてみる 亜矢子さんは「えー私寝言言ってた!? 覚えてない!」と自分を疑っていた 亜矢子さんの声はよく分かるし声のする方向も違ったので亜矢子さんではないと思うのだが
「なんて言ってた?」「寝れない……って」「えー私すぐ寝たのに! 私寝言言うのかな!?」「亜矢子さんじゃないと思うんですけど」
そこへでっちゃんがやってきたので、「あ、それ実は私で……」と言われるのを予想して同じことを聞いてみた するとでっちゃん、「あ、私もそれ聞きました!」
えっ
予想外すぎる えっまじでか じゃあ誰だ 正直完全にでっちゃんだと決め付けていた 他の人の声は分かるし声のする方向もそうだし
亜矢子さんに「寝れない、以外何か言ってた?」と聞かれ答える
「いつまで経ってもひとりぼっち、って……」
ここへきて初めてどきっとした こんなのまるでオバケみたいじゃないか?
「あーそれです! 私も聞きました!」とでっちゃん マジか?
周りはもうオバケ出没モードになっている 鳥肌立った! とかゾクッとした! とか言っている わたしはまだでっちゃんを疑っているのだがなんだかおもしろくなってきてノッてしまう それにオバケじゃないと決まったわけでもないし
もちろんこの話に結論などあるわけもなく、「ヤダー怖いねー」「なんかいたのかなー」みたいな感じで終わった

その後はゆっくりと片付けをし、最後に記念撮影をして一色の森を後にした
帰り道、道の駅やサービスエリアで何度も名古屋組の車と会って笑った 考えることが同じだ

帰ってみると、なんだかヘトヘト 同居人が肉とししとうを炒めたものと焼うどんを作ってくれた いや元気だな すごい
酒を飲みつつ食べつつYOUTUBEでキャンプグッズを見ていたら、9時ごろにはもう座椅子の上で眠ってしまった